2018年に配偶者控除・配偶者特別控除の条件が改正され、「扶養内」と言われる年収額に大幅な変更がありました。以前より収入を増やせるように緩和された印象ですが、注意が必要な点もありますので、詳しく見ていきましょう。
扶養控除とは?
扶養控除には、【税金上の扶養】と、【社会保険上の扶養】の2つがあります。
税制上の扶養は、所得税や住民税の控除や、配偶者控除・配偶者特別控除に関するものです。
社会保険上の扶養は、健康保険や年金に関するものです。
x万円の壁とは?
次の表は、x万円の壁をまとめたものです。
税制上の扶養 | 社会保険上の扶養 | |
100万円の壁 | 住民税発生(自治体によっては 100万円以下でも発生) | - |
103万円の壁 | 所得税発生 | - |
106万円の壁 | - | 社会保険加入義務発生 (※注1) |
130万円の壁 | - | 社会保険の扶養から外れる |
150万円の壁 | 配偶者特別控除の満額(38万円)が 受けられる上限 | - |
201万円の壁 | 配偶者特別控除が受けられる上限 | - |
※注1 短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大
- 週20時間以上
- 年収106万円以上
- 勤務期間1年以上見込み
- 従業員501人以上の企業(労使の合意があれば従業員501人未満でも加入可能)
- 学生でないこと
これらの基準すべてを満たす場合、厚生年金に加入することになります。
では、次に、x万円の壁を超えた場合の影響を見ていきましょう。
(1)100万円の壁
配偶者の年収が100万円以下の場合、税金はかかりません。しかし、100万円を超えると、100万円を超えた収入に対し、10%の住民税がかかります。
(2)103万円の壁
年収103万円の壁を超えると所得税がかかってきます。所得税は収入が高くなるほど税率も高くなり、課税所得195万円以下の場合は5%です。103万円を超えた部分だけにかかります。
「配偶者手当」を支給している会社は、配偶者の収入を103万円以下に設定している場合が多いので、注意する必要があります。
(3)130万円(※注1を満たす場合、106万円)の壁
年収130万円(※注1を満たす場合、106万円)を超えると、被保険者の扶養から外れて、ご自身で社会保険料を払うことになります。
社会保険は、会社の社保に加入できる場合と、国民健康保険・国民年金に加入しなければいけない場合があります。会社の社保の場合は、保険料は企業と折半ですが、国民健康保険と国民年金の場合、保険料は全額自分で負担する必要があり、負担が更に大きくなります。
雇い主側から見ると、国民健康保険と国民年金の場合は負担はありませんが、会社の社保に加入する場合、保険料の負担が増えます。
(4)150万円の壁
配偶者の年収が150万円以下の場合、被保険者は配偶者特別控除を満額受けることができ、所得税が下がります。しかし、150万円を越えると、配偶者特別控除の額が徐々に減っていき、税金は増えていきます。
(5)年収201万円の壁
配偶者の年収が201万円以上になると、配偶者特別控除は一切受けられなくなります。
配偶者の年収と配偶者控除・配偶者特別控除の額
配偶者の年収と配偶者控除・配偶者特別控除の額をまとめた表が下記になります。
配偶者の年収 | 給与所得者の合計所得金額 | ||||
1,120万円以下 | 1,170万円以下 | 1,220万円以下 | 1,220万円超 | ||
配偶者 控除 |
103万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 | - |
配 偶 者 特 別 控 除 |
103万円超~150万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 | - |
150万円超~155万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | - | |
155万円超~160万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | - | |
160万円超~167万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | - | |
167万円超~175万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | - | |
175万円超~183万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | - | |
183万円超~190万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | - | |
190万円超~197万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | - | |
197万円超~201万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 | - | |
201万円超 | - | - | - | - |
130万円の壁を超えた場合
年収が130万円の場合、健康保険と厚生年金、さらに所得税・住民税を引いて、手取りは約109万円になります。
年収が130万円を超えて働くときに、手取りが社会保険加入以前の水準(130万円)を超えて増え始めるのは、年収が170万円くらいからです。
社会保険に入ることで得られるメリットはたくさんありますが、収入によっては負担が大きく、手取りが減少します。
配偶者控除、配偶者特別控除、所得税、社会保険料、配偶者手当などを意識しながら、うまく働きましょう。